コラム
チタンと手曲げにとことんこだわったワイバン
2021.06.24
STORY11
ご存知のように、アールズ・ギアの最高峰マフラーがワイバンだ。
会社設立の章(STORY4)で触れたが、会社を作る際にキャラクターを作りたかった樋渡がいろいろ調べまくって見つけたのが、イギリスの紋章によく使われていた飛竜(=ワイバン)。会社を作ったからには上昇気流に乗せたいという縁起もかついでこのマークを採用し、同時に最高峰マフラーにも同じ名前を付けたのである。
設立当初は、磨いたチタンパイプをバーナーであぶりながら手曲げしたマフラーというのは珍しく、そもそもチタンを手曲げできる職人が少なかった。機械曲げしたチタンパイプを研磨して焼け色を付けたマフラーはあることはあったが、自分でマフラーを作るなら連続したアールで仕上がるチタンの手曲げにしようと決めていて、スタート当初はこの1ブランドのみだった。
もちろん、ただ美しいだけではなく、樋渡が理想とする低速からトルクがあって、ピークパワーも上がり、谷をなくして全域パワーアップするマフラーという目標は最初からまったく変わっていない。
ただ、最近はお客さんの嗜好が変わってきて、なんでもかんでも手曲げじゃなくてはダメという人が減ってきているという。
最近は手曲げと変わらない機械曲げが作れるようになった
いまだにビッグネイキッドは、完全に手曲げのワイバンを選ぶ人が多いが、バイクの機種によっては機械曲げで構わないという人が増えている。たとえば、Z900RS用には手曲げのワイバンクラシックマフラーと、機械曲げしたチタンエキパイを磨いてからバーナーで焼け色を付けたワイバンクラシックRマフラー(写真上)の2タイプがあるが(サイレンサーの仕様違いなどもある)、多くの人はクラシックRのほうをチョイスするという。
これは、加工機械などの進歩で、機械曲げでも手曲げ並みに美しく曲げられるようになったことが大きい。特に、1曲げ、2曲げ、3曲げとアールを変化させながら曲げた機械曲げのエキゾーストパイプは、普通の人が見ると手曲げか機械曲げか区別がつかないほどだと言う。
そして、手曲げは熟練の職人にしかできないけれど、機械曲げは極端な話、機械にセットさえすればパートさんにも作れてしまう。
最近は、フルカウルのニューモデルが再び増えてきていて、エキゾーストパイプがカウルの中にすっぽりと隠れてしまうモデルも多い。昔はハヤブサやZZ-Rなどのフルカウルモデルも手曲げでやっていたが、機械曲げにして価格を安くしてほしいという声も増えているのだそうだ。
そして、ワイバンシリーズで異色なモデルがやはりステンレスのエキパイやサイレンサーを採用したワイバンクラシック。元ワークスライダーの樋渡が代表を務めるマフラーメーカーとはフィットしにくい、クラシカルなW800/650/400やアメリカンモデルのレブル250/500にもワイバンの名前が付いたモデルが用意されている。

↑大人気のホンダ・レブル250用に用意されたワイバンクラシック・フルエキゾースト。オールステンレス製でΦ50㎜の迫力あるエキパイとブラック仕上げのサイレンサーを組合せる

↑レブル250用のサイレンサーは、ブラック、そして写真のステンポリッシュともにサイレンサーエンドに非常に凝った意匠のアルミ削り出しのリボルバーデザインを採用している
そして面白いことに、このワイバンクラシックマフラーはいずれもかなりの人気モデルとなっている。やはりワイバンという最高峰ブランドの力なのだろう。
(STORY12に続く)