コラム

多彩なサイレンサーが魅力のリアルスペック

2021.07.02


STORY12

かつてはバイクのサイレンサーと言えば円形だったが、時代とともにさまざまに変化してきて、現在はメーカーの新車に装着されているサイレンサーの形も実にさまざま。以前、シート下にサイレンサーを収めるのが流行ったが、いまはエンジン下でサイレンサーが終わってしまう極端に短いマフラーを採用するモデルも見受けられる。

形状にしても、ただの円形はかなり少なくなってきていて、三角や四角といった異型断面を持つサイレンサーも当り前になってきている。

そうなると、当然、カスタムマフラーメーカーも車種に合わせた円形ではない形状のサイレンサーを用意する必要に迫られるようになってきた。アールズ・ギアではリアルスペックシリーズが異型サイレンサーを採用しているのだが、そのバリエーションが非常に多いのが特徴だ。

形状は大きく分けて、クロスオーバルと呼んでいるトランプのダイヤ型(菱形)とセプターオーバルと呼ばれる七角形のふたつだが、そこに組み合わされるサイレンサーのエンドピースもポリッシュしたチタン、ドラッグブルーチタン、さらにはカーボンが用意され、BMW用は車種に合わせて排気口もひとつだったり、ふたつだったり……。

↑左がダイヤ型のトライオーバルサイレンサーで、最近はさらに複雑な写真右の七角形状のセプターオーバルに移行してきている

↑テールピースはチタンに加え、写真左のカーボンエンドもあり、サイレンサーボディも焼け色付きのチタンドラッグブルー、焼け色なしのチタンポリッシュを用意する。写真左はBMW・R1250GS用で2本のパンチングパイプを内蔵している

サイレンサーも、形状は同じでも長さや太さ違いで大きく分けて7種類あり、ストレート形状、テーパーのかかったメガホン形状があって、形状、エンドピース、排気口の数などすべて装着される車両に合わせてデザインを決定している。もちろん、最高の性能を実現することを前提に。

ノーマルが異型ならカスタムマフラーも異型を用意する

これだけのサイレンサーのバリエーションを揃えているのも樋渡のこだわりで、スタンダードの状態から異型サイレンサーを採用しているバイクは、そういう形のサイレンサーが似合うデザインになっているので、ただの円形ではしっくりこない。特に、カウル付きモデルはどんどん円形が似合わなくなっていると樋渡は感じている。

↑異型サイレンサーが主流となっているが、やはり昔ながらの円形のサイレンサーが似合うモデルもあり、ネイキッドモデルなどには今も採用されている

自分がこのバイクにカスタムマフラーを付けるなら、こういう形のものがいいという気持ちで、そのバイクに最適だと思うサイレンサーを用意しているのだ。

もちろん、サイレンサー+エンドピースの組み合わせを2~3種類用意して、適合するものを装着するならコストがかからなくて、製作の労力も減るのだが、「自分が付けるなら」という思いでマフラーを製作している樋渡は一切の妥協をしない。

ご存知のように、現在、平成22年規制対象のバイク用カスタムマフラーは「政府認証」を取得しなければ合法マフラーとして車検対応品にならないことになっていて、同じ車種でもサイレンサーの形状が変われば認証を取り直さなければならないほど厳格な基準が決められている。にもかかわらず、アールズ・ギアは新機種が出るタイミングで旧タイプに採用されているサイレンサーを新機種と同じタイプのサイレンサーにするために認証の取り直しまでしている。

例えば、従来モデルはクロスオーバル・サイレンサーを採用していたホンダ・X-ADVは2021年モデルが出るタイミングでセプターオーバルに変更するといった具合だ。

ユーザーにとっては、常に一番新しい形状のサイレンサーが手に入るわけだから喜ばしいことではあるが、その手間を考えると何もそこまで……、と思ってしまったり……。

ちなみに、リアルスペックシリーズのサイレンサーの一番人気は、チタンエンドのチタンドラッグブルーとのこと。やはり、ドラッグブルー=アールズ・ギアマフラーというイメージが定着しているようだ。

(STORY13に続く)