コラム

最初のビレットパーツは「サイドスタンドのゲタ」

2021.07.16


STORY14

マフラー開発の延長線上でBMWに乗ってツーリングに行くようになり、ツーリングの楽しさにすっかりはまってしまった樋渡だったが、BMWの新車が出るたびに乗り換えて、自分で乗り回しているうちに、大きなBMWをもっと楽に扱え、コントロールしやすくなるためのパーツを自分自身が欲しくなってきた。

そこで、自分で考えたパーツを自社でつくることにして、ACTIVE COMFORT(アクティブ・コンフォート)というブランド名を付けた一連のビレットパーツが誕生したのである。

バイクを意のままに操り、そして快適にライディングできることをコンセプトに、樋渡自らが走りながらアイデアを出し、テストと改良を積み重ねて生み出されるアクティブ・コンフォートシリーズのビレットパーツは、すべての製品が自社工場に備えられた5軸マシニングセンタによって特殊アルミ合金の無垢材から100分の1mm台の公差で削り出され、高い強度と圧倒的な軽さ、そして削り出しならではの美しさと高級感を誇るもの。

機能パーツとしての確かな性能に加え、入念な作り込みによって所有することの高い満足度をも実現した、アールズ・ギアならではのハイクオリティパーツである。

このコンセプトから生まれたアールズ・ギア製のビレットパーツ第一号は、サイドスタンドの下にはめて車体の傾きを緩和させるR1200GS用の「スタンドハイトブラケット」(樋渡曰く、サイドスタンドのゲタ)。

BMWでツーリングに行くようになり、サイドスタンドをかけたときに大きく左側に傾いてしまうため、バイクを起こすのに一苦労したという経験から生まれたものだった。

左側通行の日本に対し、ヨーロッパ各国はほとんどが右側通行。したがって、バイクを路肩に停める際は右端よりも若干高い左側にサイドスタンドが接地するため、それを前提にサイドスタンドの長さが決められている。そして、その仕様のまま日本で使おうとすると、下のイラストのように一般的な道路のもっとも低い位置である左端にサイドスタンドが接地するため、車体が左側に大きく傾いてしまうのだ。

たかがサイドスタンドと思うかもしれないが、BMW、特にR1200GSのように大きく重いバイクでは、サイドスタンドをかけた状態から車体を起こすのは結構、辛いものだし、ツーリングの後半戦などでは体力もそれなりに消耗しているから、少しの楽が大きなメリットに感じるものなのだ。

機能+美しい作り込みで人気パーツに

樋渡と同じく、車体を起こすときに辛い思いをしてGSに乗るライダーが多かったためか、このスタンドハイトブラケットは発売当初からよく売れたし、いまも売れ続けているという。

パーツとしては、上下2分割のビレットパーツで、そのふたつのパーツでサイドスタンドを挟み込んでボルト留めするだけという単純な構造。とはいえ、何㎜アップさせるか、幅はどうするかなど、樋渡がテストを重ねてその車両に合った最適なサイズと形状にしているのは言うまでもない。

↑スタンドハイトブラケットの構造は単純で、上下2つのパーツの間にサイドスタンドを挟み込んでボルトで固定するだけ。とはいえ、車種に合わせて高さや幅などを厳密に設定している。写真左はBMW・S1000XR用、右は2021~HONDA・X-ADV用

そして、上下のパーツもただの平面ではなく、複雑なラインを何本も入れたり、中空のデザインを施したりと、サイドスタンドの下に取付ける小さなパーツにもこだわりが満載。しかも、高級感を感じさせるブラックアルマイト仕上げ(一部、レッドアルマイトやクリアアルマイトもあり)となっている。

BMWだけではなく、最近は国産モデルも世界展開している車両が増えてきていて、ホンダのゴールドウイングアフリカツインX-ADV用などもよく売れているという。そして、いま大人気になっているのは、ホンダのレブル250/500用(写真下)とのことだ。

また、Rebel1100用も現在、開発中で、8月上旬発売予定となっている。

<STORY15に続く>