コラム

性能はいいがエンブレムがカッコ悪いと大不評!

2021.06.01

STORY6

88年の秋からスタートしたオリジナルマフラーは、発売当初、どのようにユーザーに受け止められていたのか。

アールズ・ギアでは、いまに至るまで商品に必ずアンケートハガキを同梱しているのだが、買ってくれたお客さんの多くが性能にはとても満足している、そして外観もキレイで気に入っていると書いてきてくれた。

なかには、もっとうるさいマフラーを作って欲しいと書いてくるお客さんもいたが、当初から合法的で車検対応のマフラーしか作るつもりがなかったので、そういう声には一切応じることはなかった。

しかし、予想外だったのがサイレンサーに取付けられたエンブレムの評価。とにかく「カッコ悪い」という声が多かった。なかには、エンブレムを楕円か長方形に代えて欲しいという人や、エンブレムを外してくれたら購入するという声まであったという。

この初代のエンブレムは、遠くからでもアールズ・ギアのマフラーだと分かるように樋渡が自らデザインしたものだった。多くのメーカーが採用していた楕円や長方形のエンブレムとは一線を画す、ひし形を基調にしたオリジナリティあるものだったのに、あまりにも評判が悪かった。

スタッフは、性能いいね、カッコもいいねというお客さんの声に満足していて、エンブレムなんてそのうちみんな慣れますよと言ってくれたが、4~5年くらいはカッコ悪いと言われ続けたそうだ。

そのうち、初代エンブレムを作ってくれていた会社が突然、倒産。金型を引き上げることもできずに、現在の2代目エンブレムに変更を余儀なくされたという(上の写真左が設立当初のエンブレムで、右が現在のもの。当り前の長方形や楕円にしないところにアールズ・ギアのこだわりがあるのだ)。

クレーム解決に鈴鹿⇔東京を何度も往復した

↑フルカウルモデルの代表がスズキ・ハヤブサ。ハヤブサオーナーの間のアールズ・ギアのマフラーのシェアは驚くほど高い

↑カワサキ・ZZ-R1100も設立当初の人気モデルだった。フルカウルモデルでもどこにも当たらずピッタリ装着できる精度を誇っていた

自慢のエンブレムが受け入れられなかったこと以上に、樋渡を悩ませたのはハヤブサやZZ-Rなどのフルカウルモデルに装着しようとすると、カウルに干渉して装着できないという販売店やお客さんからのクレームだった。

きっちりした治具で製作しているからちゃんと付かないわけはないのだが、その対応のために樋渡は何度も東京などの用品店まで駆け付けたという。そこで知ったのは、新参メーカーのマフラーなんかちゃんと付くわけない、カウルに干渉して当り前と販売店のスタッフが信じ込んで装着していたという事実だった。

残念ながら、そういうクレームが3~4年続いたが、だんだん内容がパターン化していって、カウルのそこが溶けるならこういう風に付けていませんかなどと電話で説明できるようになり、樋渡が駆け付けるケースはなくなっていった。

いまでもお客さんからうまく付かないという連絡が入ることがたまにあるが、いまは干渉している部分などの写真をメールで送ってもらい、その画像で判断してアドバイスしている。鈴鹿から東京までわざわざ駆け付けなくてもよくなったわけだから、便利な時代になったものだ。

(STORY7に続く)