コラム

GS用ドライカーボンマッドガードが完成しました!

2021.09.19


STORY20

前回のコラムで、Racing Conceptという名前のスーパースポーツ用パーツの新展開について書いたが、今回はFacebookページでちょこちょことその開発過程をお伝えしていた、BMW・水冷R1200/1250GS&ADV用のドライカーボンマッドガードがついに完成したお話。

雨の中でも走り続けるライダーにとっては、走っているときの雨粒も嫌なものだが、止まった後にリヤ周りがドロドロになってしまうのがなんとも困ったこと。ナンバープレートからシートエンド、さらには装着したトップケースまで泥まみれになるくらいの雨天走行をした後は、洗車がかなりの重労働になる。

それも、すぐに洗車できればいいけれど、洗うタイミングがなかなか取れずに数日置いてしまった場合など、車体のリヤ周辺にこびりついた泥汚れの取れにくいことといったら……。

そんな経験をしたことのあるライダーは多いと思うが、アールズ・ギア代表の樋渡もその一人。特に、1日に700km近い走行を数日するようなロングツーリングの際は、雨に遭うこともしばしば。洗車の時間が取れずに、仕方なく泥がついたままの状態でツーリングを続けることもあるという。

そこで樋渡が、愛車のR1250GSアドベンチャーを走らせながら思いついたのが、STDのマッドガードの上に取付ける大型のマッドガード。それも、スタイリッシュで軽量、高強度のドライカーボンで作ることにしたのである。

↑左の純正のマッドガードに対し、アールズ・ギアのドライカーボンマッドガードはご覧のように上下が非常に長く、リヤ周りへの泥跳ねを確実に防いでくれる。また、大型でも走行性能に影響を及ぼさないように超軽量に仕上げられるドライカーボン製としたのである

大柄なGS-ADVだから、マッドガードもかなり大型のパーツになる。大きくても走行に支障がないよう、とても軽いドライカーボン製とすることを選択。なによりライディングしたときの気持ちよさや軽快感を重視するアールズ・ギアならではの選択だ。

じつはこのマッドガード、以前、カワサキ・1400GTR/Concours14用にロングリヤフェンダーという商品名で用意されていた。リヤ周りをきれいに保ってくれるその性能の高さで、非常に好評だったそうだ。

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カワサキの大型ツアラー・1400GTR/Concours14用に用意されていたロングリヤフェンダー。ノーマルよりも105㎜長く、確実に泥跳ねを防いでくれると高い評判を得ていた。同形状でカーボン(左)とFRP(右)がラインナップ

ドライカーボン成型型も自社のマシニングセンタで製作!

ドライカーボン製品を作る工程は、特殊素材で製作したオス型とメス型の型に、カーボン繊維を綾織のシート状に製作した生地のプリプレグを形状に合わせてセットしたのちに型ごと真空パックして圧縮。その状態で高温の窯で熱して、高強度のドライカーボンを成型していく。

なので、その真空状態と熱に耐えられて、変形を起こさない強度が成型型には求められる。したがって、型を製作する場合には、高耐熱で高強度の素材を用いる必要があるため製作費用はとても高く、その高価な型代も原価に加算されるのに加え、ドライカーボン製品は素材自体が非常に高価で、さらにすべての工程が手作業で行われるため、市場価格はどうしても高価になってしまうのだ。

しかし、アールズ・ギアでは自社のマシニングセンタでカーボン成型型も製作する。巨大な特殊素材から削り出すので、材料費はもちろん、人件費等の製作費もかかってくるが、自社で製作することにより外注するよりはコストを抑えられ、さらに細部までとことんこだわったものつくりが可能になる。つまり、自社製作とすることで商品のクオリティを最大限高めながら、市販価格もできるだけ抑えるというメリットに結びつくのである。

↑アールズ・ギアでは、このドライカーボンマッドガードの成型用型も自社で製作する。自社製作の強みは、当然、コストダウンが図れることでもあるが、それよりも樋渡自身が納得のゆく形状をとことん求められることなのだ

このコラムを読んでくださっている方ならもうお分かりだと思うが、樋渡が自分で欲しいと思って、さらに自分の愛車に装着するパーツなので、100%、いや120%満足のいく性能でなければ納得しない。

今回も、お盆休み前にできてきた試作のマッドガードを愛車に取付けてロングランテストに出かけた樋渡だが、その結果、さらなる性能アップのためにわずかな設計変更を行った。これだって、外注していたら、まあいいかと妥協してしまう(それよりも、外注先に断られるかもしれない)ような細かい設変である。

さらに、STDのマッドガードの上にこのドライカーボンのマッドガードを固定するにあたり、絶対に装着位置がずれないようにSTDのマッドガードとボルト固定するためにジュラルミン素材を削り出し加工したオリジナルの2ホール特殊形状ナットを製作し、それをカーボン成型する際に一体成型してSTDのマッドガードと共占めする構造を採用することで、軽量ながらも高い精度と圧倒的な強度を実現している。

どんなに面倒な作業でも、理想を追い求めて一切の妥協を省いて製品化する。アールズ・ギアのものつくりの真骨頂である。

Facebookページで情報をお伝えしたら、早くも問合せが多数きているこのドライカーボンマッドガードだが、当初は10月発売予定だったが、前述のようにテスト走行の結果、さらなる性能アップのために成型型の形状変更を行うことにしたため、発売は12月中くらいまでずれ込みそうな状況。

お待ちいただいているお客様には大変申し訳ないけれど、理想の製品を追求する結果なので、なにとぞご容赦いただきたい。